EVENT活動報告

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【性・アイデンティティ】Xジェンダーは世界の癒し ~ 違いを楽しむ

X heals the world.

2018年の5月連休に、東京レインボープライドの協力イベントとしてPoints of You®ワークショップを開催しました。

 

ステキな優しい笑顔の参加者の方々に恵まれました。何を目指しているのかが、開催しながら言葉になってくるのが、主催・ファシリテーターとしての体験でした。

 

世間と繋がりを保って自分を生きること。

それは「あなたは私に幸せになってほしいか、ほしくないか」という問いとなる。

それは、世を裁くよりも強い力となり、世界を癒す。

※イベント当日のことに限らず企画・準備・開催を通じて主催が感じたこと全般として報告します。

 

背景

典型的ではないマイノリティが存在を現しはじめた

LGBTという用語が浸透することで、逆にその外に残される人たちもいます。LGBTを名乗るには申し訳ないと思ってコミュニティーに参加しづらいLGBTフレキシブル、LGBTらしくないということでニセモノ呼ばわりされるグレーゾーンな人など。

本ワークショップは、そのような人たちにも向けて開催したいと思いました。

無数の個が擦れ合って成長している

啓蒙の世界では、「差別反対」を超えて、「全ての人が尊重される社会」がうたわれはじめました。公共の枠組みも改善されてゆきます。これを「公の旅」と呼びたいと思います。

一方で、当事者コミュニティーでは、「全ての人」ではなく、それぞれに偏った「無数の個」が擦れ合いながら、仲良く衝突することに熟練してゆきます。かすり傷をおいながら個々が歩む道、これを「個の旅」と呼びたいと思います。インターネットで容易に情報が得られるようになったことで、世代を超えた個と個の接触が減っているとも言われています。

「公の旅」と「個の旅」はダイバーシティの両輪かと思います。

当ワークショップは、初対面同士が集まるイベントとしては珍しく、「個の旅」の領域に触れようとするものです。

 

投げかけたテーマ「違いを楽しむ」

「自分と同じような人と会ってホッとする」という体験もありますが、ここでは「違っていても大丈夫」という体験を目指します。違っていても、一緒にいてお話できる。私たち自ら癒しの場をつくりだせるということを体験します。

 

どんなことが起きたか

 

 

打ち解ける – Devotion to open hearts

一般的に、ジェンダーやセクシャリティのお話カフェでは、思っていることを話せるまでに、警戒や遠慮が続くことも多いです。Points of You®の活用で、お互いに安心感を提供しあうことが容易になりました。

プロセスを見守る – Pay it forward

上述で「個の旅」と言ったものは、ときには居心地の悪さも経て、「違っても大丈夫」にいたるというようなプロセス。本ワークショップでも、違和感を訴える人や、それを聴いて見守る人がいました。

Points of You®では、聴いて見守る力を「プロセスを信じる」というように表現したりします。また、相互に試行錯誤しながら関わりを続けることを「ダンスをする」と表現したりします。

良し悪しの判断を早まらずに、関わり続ける仲間(経験者たち)の参加も、活用のポイントになりました。

もやもやの一歩外へ – Dream may break patterns

参加動機で多かったのが、表現は様々ですが「もやもやから抜け出したい」でした。

心の癒しを得るには、「何を得たいのか」を語ることが有効です。他者批判をほどほどに、自己洞察へエネルギーを注ぎます。

人は「いつもの用意された自論を語ること」が得意です。また、「新たな意見を他人から押し付けられること」は嫌いです。しかし、欲しいのは、「いつもの自論でもなく、人から押し付けられたのでもない、新たな気づきや安堵」です。

それぞれの「喜び」や「違和感」に触れる語り合いを通して、性自認などについての、それぞれの納得や、新たな視点を得る参加者もありました。

 

違ってても大丈夫の意味 – Sense of belonging

「違いを楽しむ」と言う副題に込めたものは、違ってても大丈夫という世界観。「違っても、理解できる/される」という大丈夫体験はもちろん歓迎ですが、「理解できない/されないことがあっても大丈夫」という大丈夫体験も大切にしてみました。

提供しているのは一時避難場所ではなく、「違ってても大丈夫な世界はつくられる」という体験です。

今回のプロジェクトでも、無性愛傾向の人が(共感できないはずの)男女恋愛話の場に加わり、「面白い」「楽しい」と言う場面もありました。

 

期待通りか、驚きか? – Unexpected but precise

「普段思っていることが言える場」へのニーズも強い分野で、あえて「普段思っていることとは違った発想や視点に触れる場」を提供しました。

ジェンダーに深く突っ込んだワークとして、社会のジェンダー規範と付き合ってみるということもしてみました。

たとえば「顔写真をつかって好きな人探しをする」というワークをしたときに、ゲイの人が女性の写真を選ぶというようなことが起こります。あるいは、無性愛の人が、「”好き”は恋愛以外にもいろいろある」という感覚を他の参加者と共有するというようなことも起こります。

「自分はゲイだから男性が好き」「自分は無性愛だから人を恋愛感情がない」などは、「普段思っていること」です。あえてワークしてみることで、なんらかの体験が起きるわけです。それによって「すっきり」や「もやもやを抜け出す」が起こります。ただし、「ワークをしたくない」という抵抗も起こります。「ワークをやってみたけど出来なかった」と「ワークをしたくない」は別のことです。本ワークショップの参加者も、それぞれに挑戦されていました。

好きな人探しワークは「人は人を好きになるものだ」という規範が前提です。「男らしさ・女らしさ」を自分の中に探すというワークも「らしさというものがある」という規範が前提です。それらを押し付けられるという嫌な思いをしてきた人にとっては抵抗があります。1対1や少人数のセッションであれば、丁寧に扱うことができるかもしれません。(年齢によってもハードルが違うように感じました)

両性・中世などのテーマを持つ人にとっては、ジェンダーを問い直すようなワークは比較的抵抗がなく、自分自身に対するモヤモヤがすっきりすることも起こりやすいようです。無性、無性愛などのテーマの場合は、ご自身はニュートラルで、モヤモヤが社会との間のギャップとしてあるため、自己を語る前にいきなり他者理解の課題に直面するなど、自己洞察のハードルは上がりやすいかもしれません。であるからこそ、違いのある他者がプロセスにつき合ってくれる(体験を聴いてもらえる)ということが重要な体験になるのではと思います。

一方で、「楽しんでいることは何か? 悩んでいることは何か? 望むことは何か?」といったような、「ジェンダー規範」や「違い」とのぶつかり合いが少ない問いのワークも試しました。こちらは、抵抗は少なくなりましたが、物足りなさの感想も得られました。ジェンダー規範とのぶつかり合いを避けると、ジェンダーというテーマの深まり(社会批判ではなく、自己洞察として)は難しくなります。

本ワークショップの準備段階の初期には、「男らしさ・男性性・女・女性性」などの言葉を排除してみるアイデアを持ちましたが、実験・検討する中で、どうも規範を否定することでは、規範を超えられないというように感じて、そのアイデアは廃止しました。

男女の概念がない人のために、ジェンダー概念を使わないアイデンティティのワークを提供することはできます。そのようなワークショップは私も開催したことあります。ジェンダーレスなアイデンティティ探求の枠組みが多数紹介されている中で、あえて「ジェンダー」をテーマとするワークショップに参加する人がいるのは、「私は私」「男女なんて関係ない」では済まない何か、なにかしらの関心(悩みや挑戦)があるということでしょう。

規範と付き合うワークを試した背景には、セクシャルマイノリティの方々から聞いたストーリーがあります。「規範を目の敵にしていた頃よりも、規範から自由になってからの方が幸せになった」というようなことをおっしゃいます。たとえば、トランス女性が男装を楽しんだり、トランス男性が家族を守ることにフォーカスして「うぃっす、じぶん女っす」と言って世間付き合いをしていたりします。

日常生活とは別に設けられた場で規範と付き合って(?)みて、普段と違う視点に触れることは、「もやもやから一歩出たい」という参加動機への応えになるのではないかと思いました。

そのためには、今回をふまえて趣旨を明確にして、主催者のストーリーとして意図を語る必要もあるようにも思います。

 

裁判ではなく夢を – X heals the world

正しさをとるか、幸せをとるか。正しいことを言って、正しくないものを裁くための場ではなく、自分の心との対話して、自分のプロセスを進める機会を目指しました。

ワークショップ名を「Xジェンダーが癒される」ではなく、「Xジェンダーが世界を癒やす」としたのは、一つの暗号です。規範とズレのある自分を生きることは、規範を批判することではなく、愛か怖れか、存在をもって問い掛けることのように思います。その問い掛けが世界を住みやすくするのではないでしょうか?
 

参考:ジェンダー多様性について by Kojun

 

主催 マスタートレーナーKojun
協力 認定トレーナー岡田真由美、てあての間代表なつ紀、Circle of Life

このイベントは東京レインボープライドに協力しています。